平成181011

 

 

Professor Howard Gardner Japan Lectures 2006

-Summary Report with Personal Views-

 

日本MI研究会 上條雅雄

 はじめに:

 金木犀の花も散り、すっかり秋らしくなりました。皆様のご協力、ご協賛のお陰でハーバード大学教育大学院 ハワード・ガードナー教授の日本講演会も無事に終了しました。今、もう一度講演の概要を振り返り、当日のArchives資料*を参照し、教授の著作、論文などと照らし合わせながら、纏めてみました。特に感じた点は認知心理学者として教授が、その長年の研究の理論とそれを体系的に「深い理解の教育のFrame Work」として、さらに先人の業績を整理され、紹介されたことも印象的で、一層理解を深めることができました。また、今までの自分の理解に対して、言葉のちょっとした表現の中になるほどそういう意味だったのかと大事な発見を幾つかすることができたことは大変大きな、収穫であり、貴重な機会でした。

u         *Courtesy of Professor Howard Gardner, Harvard Graduate School of Education www.howardgardner.com

 

日時・場所:86日(日)東京大学経済学研究科棟1番教室

 

Part I. Main Lecture                                                             ( p 2 )

テーマ:”Why Deep Understanding Should Be Central in All Education?”

「何故、深い理解がすべての教育の中心になるべきなのか?」

Howard Gardner, Harvard University

 

Part II. Short Lecture                                                            ( p 10 )

テーマ:”Current Thinking about Extreme Gifts”              

「きわだった天才児に関する今日の考え」

Ellen Winner, Boston College

 

コーディネーター:佐藤 学 (東京大学大学院教育研究科教授)

 

 

共催:東京大学大学院教育学研究科 21世紀COE基礎学力研究センター

財団法人 ソニー教育財団

招聘・企画:日本MI研究会 Japan MI Society

 

 

 

 

Part I. Main Lecture

 

テーマ:” Why Deep Understanding Should Be Central in All Education? ”

「何故、深い理解がすべての教育の中心になるべきなのか?」

Howard Gardner

 

I.                  Background for the interest in understanding

 

―私が何年か前から存じ上げていた波多野宜余教授の訃報に先日触れました。心からのご冥福をお祈りいたします。本日と明日のソニーにおける講演を彼に捧げたいと思います。先生は理解の分野の偉大な研究者であり、特に「幼児の正しい概念や誤った概念に関する研究・発表」に携わっておられましたので、この講演を先生に捧げるのは非常に適していると思います。―

 今日の講演の中でunderstandingという言葉が登場する。英語ではunderstandという言葉は日常よく使われ、例えば妻が私に何か買い物を頼む際にDo you understand?と聞かれ、私はYes, I understand.と返事をして、買い物に出かける。買い物に行ってきちんと頼まれた物を買ってくれば理解したことになる。しかしここで私が言うunderstandingの中には「理解した内容を具現化すること」までを含んでいる。この何かをすることを自らも他人も見ることが出来る。また、「深い理解とは」何かと言うと、妻から何も言われなくとも、何を買ってくれば良いのかが分かる状態にあることである。

l         1960年代に発達した認知心理学は、人間の行動のみに重点を置くそれ以前の行動心理学とは異なり、人間の内面的な動き「認識:Mental Representation(心的表象)が行動につながること」に焦点を置いてきた。

l         1980年代にハーバード大学はProject Zero により、この認知心理学を、教育学に適用することとし、「理解のための教育」を主要な概念として研究を続けてきた。

Performance of Understanding:「理解の実践または行動」は表面的には行動であるが、ここでいう新しい認知心理学では、人が世の中に関していかに考え、その時に心、脳の中で、イメージ、スキーマやフレームワークがどう進められ、表現されているかが重要視される。このMental Representation(心的表象)が外部への行動にどう置き代わるかに焦点を置いている。私達は行動に繋がる「認知」に興味をもっている。

l         一方、行動主義心理学者は認知に関しては、全く信じないで、ある刺激に対する行動の結果の関係性のみに関心を持ち、その行動を操作するために、褒めたり、罰したりすることで行動を増加/減少させる。B. F. Skinnerのような行動主義心理学者が、この部屋の皆さんの様子を見ると、何の動きがないので、何も行動を起こしていないと判断する。しかし私たち認知心理学者は、行動は起きていないが、Mental Representation(心的表象)が起きていて、それが皆さんの手の動きに反映されていると見る。

l         この11年間、私たちはProject Zero Classroom- Summer Institute-を開催して来た。ソニー教育財団からは日本の先生方を派遣して頂いている。また、日本MI研究会とはMultiple Intelligences Ideaと理解の概念を繋げる取り組みの研究を進めている。

l         誰も理解そのものに反対する人はいないと思うが、我々は殆どの学校が「理解」に関して触れていないことを主張する。記憶を再現するテストしているだけでは、記憶力だけのテストであり、理解のテストにはならない。

l         少しデリケートな例えではあるが、今日は200686日であり、61年前に広島に最初の原爆が落とされたのである。日本では誰でも知っていることであり、米国でも原爆を投下するか否かの決断の議論が分かれたことを殆どの学生が知っている。今日の新聞を開くと北朝鮮の核弾頭を持っているとか、イランが核兵器材料を集めているとかそれを平和目的に利用するというが記事が出ている。学生がもし、広島の原爆と3日後に起きた長崎の歴史的な出来事と、最近のこれらの記事の関連性を理解していれば、今日の北朝鮮、イラン問題に深い理解が出来ていることになるが、単に過去の事実として知っているだけであると何ら関連性を持って理解できていないことになる。本当の意味を理解できていないことになる。

     スキーマ:schema人は行動する際、多くは過去の経験から生まれた、基本的な知識のまとまりをもとに、予測対応しようとする。
 それら、外界からの情報を処理するために使われる、知識のまとまり、 構え mental setを総称してスキーマ(またはシェーマ)という。

認知科学cognitive science人間の知的な働きの仕組みを研究する分野。
 心の、情報処理システムとしての側面、性質が、認知心理学、人工知能工学(AI)、言語学や哲学、行動
学など、広い分野が関わりながら研究されている。

理解に関する思考に多大の影響を与えた専門家達:

l         John Dewey (1859-1952) アメリカが生んだ最も重要な哲学者・教育学者。

l         Jean Piaget (1896-1980) スイスの最も有名な発達心理学者。子供の心理学、誤解、概念確立の研究。

l         Lev Vygotsky (1896-1934) ソビエトの認知心理学者。発達心理学を教育の分野に進めた。Piagetは教育にはあまり関心がなかった。

 

II. Understanding as an educational goal:教育の目標としての理解

l         純粋な記憶を超えて、情報を思い出し、

l         自分や他人のために理解をパーフォーマンスとして行動する。

l         知識、スキル、考え方を新たな状況下で適切に応用できた時が理解である。もし、応用が出来なければ、その知識はそのものが明確でなく、使用に耐えないものである。

これは極めてアメリカ的な実用主義の考え方かもしれない。

 

III. Understanding in early life:幼児期の理解

5才頃までに子供たちはそれなりの物理学的、生物学的、心理学的な理論を形成している。しかしそれらは必ずしも正しいものではない。

l         粘土の固まりを切り刻んでいって、小さくなってしまったら、なくなってしまったと考える。(Theory of Matter)

l         何かが動いていれば生きている。動かないものは死んでいる。TVなどになると生きているのかどうか良く分からない。(Theory of  Life)

l         自分と外観が違うと心も違うと見え、悪い人だと思う。(Theory of Mind)

The Unschooled Mind:学校教育を受ける前に出来た、生まれつきの信念

15年ほど前に私の著書「The Unschooled Mind」で書いているが、最高学府で教育を受けたその中の最優秀の学生でも、次のようなUnschooled Mind 多くの場合は誤解を含むものを持っている。

l         ScienceGravity コインを指で弾き上げる時にどんな力を得るかと聞く。ほとんどの人は次のように間違った答をする。(物理を専攻した人でも)手にあるある力がコインに伝わり、暫くの間その力がコインを上昇させ、その力が尽きるとコインは疲れて地面に落ちる。しかしながら、物理ではコインが指を放れた瞬間からコインが得る唯一の力は重力である。

l         Science: 生物の場合。進化論においては、環境に適していく変種は子孫を残して行くのが、環境に適さない種は消滅していくというのが進化論であるが、このような教育を受けながらも、学生はこれらが、目に見えないものにガイドされ、何らかの卓越した種は生き残り、これらの最終的な姿は事前に決められているものと考えている学生が多い。また、これらが適応力によるものであることを多くの学生は理解していない。

l         History:歴史における例としては、第一次世界大戦に陥った理由は何かと学生に聞くと、19148月の戦争に至った複雑な因果関係を説明できるが、今日の中東情勢に関してどうしてこうなったかと米国で聞くと、複雑な因果関係を全く忘れて、サダム・フセイン、オサマ・ラディンが悪いというような答えしか返ってこない。近代社会の複雑な因果関係は全く忘れている。実は我が国の大統領、副大統領、国防省長官も全く同じ考え方を持っていることである。

 

IV. Obstacles to understanding

l         Short-Answer Test: 世界中で行われているこのテスト方法では、理解度のレベルを計るところまでは行かず、記憶のチェックしか出来ないことが多い。

l         Question:

世界各国の教育大臣は、今日の世界の教育の目的は何だと思っているであろう。

Answer:

国際的な競争におけるテスト結果を上げること…本当にこれが教育の全ての目標であろうか。

 

V. Disciplinary Understanding学問分野の理解 

l         Which brings us to the Major Purpose of Education after early Childhood:

幼児期以降の主たる教育の目的は、我々の世の中に関する基本的な問題に答えようとする学科/分野の理解である。

l         Points about Understanding

1.理解を達成することは容易ではない。

2.理解することはパーフォーマンスであり、Performance of Understanding:理解の実践ケースは理解の不足部を露出する。

3.学問分野:Disciplineは理解のための重要なアリーナである。

l         Steps Toward Disciplinary Understanding

学問分野でその理解を深めるためには、その領域で何が本当に重要であるかを決め、この課題に時間をかけることを決め、その際に人はMultiple Intelligencesを持っているという利点を有効活用することが重要である。* The Disciplined Mind, Howard Gardner

l         Key Understandings 基本的な理解「真・善・美」

  何が真実で何が偽りか、何が不正でそれは何故か、何が美しくそれは何故か。これらは永年にわたって、常に教育者が重要視している課題である。これらの理解を各領域で求めている。

Truth (Falsity) -科学、数学、歴史、民族知識

GoodnessEvil-モラル面での知識と行動

Beauty(Ugliness ) -芸術、自然の鑑賞や製作/生産

「深い理解」のためには、これらの判断基準を活用することが各領域で重要となる。

l         What is The Disciplined Mind? (主な学問分野における理解の深め方)

科学(相互関係、モデルは正しいか、信頼や意見に対する証拠材料)

歴史(人間の役割、実験は不可能、現在中心主義:presentismを避ける、各世代が書き直す、証拠を参照する)

数学(公式を超えて、発見を楽しむ)

芸術(popular form を超える、formal properties, 故意の虚偽を避けた読み方や書き方)

l         Specimen Cases (この考え方Disciplined Mindを具現化するために例題を上げると次     のようになります。)

Truth Dimension        ダーウィンの進化論

Beauty Dimension       モーツアルトの音楽

Morality Dimension    ホロコースト

l         Teaching for Understanding

Project Zeroではこの20年ほど、システマティックに「理解を深める教育のframe work」を推進している。この中には4つのコンポーネントがある。

Understanding Goals:コース終了後に何を理解して欲しいか。

Performance of Understanding:目標を達成できたかを確かめる理解の実践。

Generative ideas:いかに学生に興味を持たせ、理解を深めさせるかのトピック。

Ongoing assessment:期末だけでなく、何が起きているか継続的に評価をする。学生同士の評価、教師の評価を含む。

*豊かなアイデアの課題を探し、幾つかの異なる方法で学び、学生に彼ら自身の学習を評価する機会を与えると理解の教育の機会が生まれる。

l         Entry Points to Key Concepts:

    “MI” meets Understanding.

複雑なトピックを教える時にはさまざまな切り口を使って教えることが出来る。どんなトピックも少なくとも次の6つの異なる「窓」から同じ部屋(Concept)に入れる。学生が他のEP(複数)も探査出来ると多重の物の見方をする機会を開発出来る。これは固定概念的な(stereotypical)考え方への最良の矯正手段である。

Narrative (説話的)

Quantitative/Logical (数量/理論的)

Existential (存在に関する)

Aesthetic (審美的)

“Hands-on” (経験的)

Interpersonal/Collaborative (協働的)

l         The Cognitive Explanation of

 What Disciplinary Understanding is NOT!

  一つの概念を説明する時にそうではない反対なものを説明すると良く分かると思う。Cognitive Understandingでないものは、

l         Empiricist ViewA Skinner-Hirsch View):経験主義

Empiricist Approach to knowledge(経験主義者的アプローチ)である。経験主義的な概念では、子供が生まれた時には全くblank slate(無の状態)から始まるという考え方である。そして、学習とは、関連性のないfact:事実の積み重ねであると定義する。そしてfactが頭の中に一杯になった時に教育を受けたという。先ほど世界各国の教育大臣を責めたが、教育を受けたということはどこかの教育大臣や一般の人が言うように単に沢山の事実:factを知ったということではない。(TVのクイズ番組で沢山答えられるということではない)

 

 

 

l         Constructivist ViewA Piaget-Vygotsky View):構成主義

私が200686日にこの東京の講演で主張したいことは急進的な異なる概念です。あまりにも急進的なので本当に根強い認知心理学者しか信じていないことかもしれない。

子供は初期の段階から大人の介入無く、自ら作り上げたパワーフルな世界観を持っている。(前出のTheory of matter, Theory of mind, など)この子供達に理解を持たせるには2つのことをしなければならない。

1) 考え方の不十分、不適切な点を見出し、

2)そして事実を示し、整理してやる必要がある。

「理解のアプローチ」を知っていれば、各課題に対してより深く教えることが出来て、歴史でも科学でも、どんな学問でも、今まで浮動していたバラバラの知識に纏まりを持つようになる。

孤立した知識はクリスマスツリーの飾りのようなものであり、飾り付ける枝、幹が必要である。ツリーが例えば、科学、歴史、経済の領域:Disciplineでそれぞれの構造が一体化するのである。それが確立されるとInterdisciplinary work学際的な学びが可能となる。

 

 

 

 

VI. Interdisciplinary Understanding

世の中の問題の解決には、いろいろな分野を通じての取り組みが必要だ。複数の学問分野を学ぶことにより、ひとつの分野だけでは見えなかったことが理解できるようになる。学際的な学びと確かな理解が必要だ。

 

VII. Relation to Creativity

創造性は、理解することの特別な形(special kind of understanding)である。自分にとってではなく、誰もがこれまで成し得なかったperformanceのことで、しかも社会から支持されることを実現することである。

 

VIII. Concluding Remarks

纏め:7つの提案と2つのアイデア

1)  理解が教育の主たる目標でなければならない。

2)  理解は頭の中で起こるが公に実践しなければならない。

3)  そのための良い教育が必要である。学問分野の理解は非直観的なものである。

4)  学問分野の理解とは持っている知識を新たな状況下で使うことである。

5)  学際的な理解はより挑戦的である。今日の世の中では必要不可欠である。

6)  創造性は特別の種類の理解である。教師も学生も今まで理解し得なかったことを実現することである。

7)  将来どんどん自動化される時に生き残れる人は理解できる人たちであり、その理解を他人に伝えられる人である。

l         One View of Educational Enterprise

従来型の教育の目的は「知識、スキル」を教えることであり、その評価法はそれが身についたかをスタンダード、短答式テストで評価するということである。

l         “Better” View of the Educational Enterprise

私が提唱するもっと良い新しい教育の目的は「深い理解」であり、その深い理解をより信頼性の高いPerformanceベースで評価することである。

 

IX. References

以下に講義では直接触れていないが、参考になりそうな点を付記します。 

(1)  Gardner, H. (2006). The Development and Education of the Mind. Routledge

CHPTER 16 THE UNSCHOOLED MIND Why even the best students in the best schools may not understand (p134-144)より、本講演該当部分の抜粋をする。(上條)

l          一例として、あなたが7才の時に次のような概念を抱いていたと信じないかもしれない。:もし、粘土の玉を刻んでいったら、粘土が少なくなったと考えたり、水を違う器に注いだら器の形によって水の量が多くなる/少なくなったりすると考える。しかし、世の中の4才の子供はこのようなことを信じている。Piagetが間違っている点は彼の議論の中で、人は年を取ると世界観が変わり、もはや幼児期の考え方には影響されないという点であると私は思う。我々の多くは自身の専門分野を除くと、我々が5才であった時の考え方を続けている。我々は就学以前の考え方を続けているのである。これは少々急進的な主張である。(P.134

l          5才児は直覚的概念や理論をつくる-theory of matter, theory of mind, theory of life-.あらゆる通常の5才児はこれらの理論を発達させる。然しながら殆どの場合これらの理論は間違っている。学校ではこれらの誤った理論をより良い理論に置き換えなければならない。(P.136

l          私は執着しなかったがPiagetは重要なことを言った。発達心理学者は教育学者になるべきでないと言ったのである。そして、彼は教育理論の提案を避けた。私は今日ライオンの穴に踏み込んでしまった。そして、発達心理学から出てきた教育理論をあなた方に提供した。Piagetの訓戒に執着すべきであったかは時のみが告げるであろう。(P.144

 

 

2Wiske, S. (1998). Teaching for Understanding. Jossey-Bass

Chapter Six What Are the Qualities of Understanding?

             Veronica Boix Mansilla, Howard Gardner

 

@「理解の結果」を評価するにはさらに明確な理解の定義が必要になる。Teaching for Understandingプロジェクトは理論的でかつ実用的な「理解の質」を評価し、方向付けするガイダンスすなわち、フレームワークDimensions of Understandingを開発した。これに関連する、上條レポート「Dimensions of Understanding:理解の4軸」から以下を抜粋する。

このフレームワークは学生の実践の中で認識される、次の4軸を持つ。

Knowledge, 知識       Purpose,目的

Methods, 方法        Form, 形式

AこのKnowledgeの軸において、前述の講演において述べられた、直観的信念の変換に関して詳細されている。(p184)

l          Table6.1. Four Dimensions of Understanding and Their Features

   「理解の4軸とその特徴」         訳/編集:上條雅雄

i) Knowledge Dimension

A. 変換された直観的信念:Transformed intuitive beliefs

その領域の正当化された理論や概念が学生の直観的信念を変換したことをどこまで学生の理解の実践活動は示すか.

B. 理路整然とした、豊かな概念的ウエッブ

                 :Coherent and rich conceptual webs

豊かに組織された概念的ウエッブの中で、学生はどこまで、詳細、展望、実例、普遍性の

間を柔軟に動きながら論ずることができるか。

-以下詳細省略-

この他に、ii) Purpose, iii) Method, iv) Formの各軸:Dimensionがある。

 

(3)discipline: a branch of knowledge or learning (Webster's New World辞典より)

 なるほどという英語訳にあたりました。Gardner教授のいうdisciplineは学科であると同時に、その個人が持つ、脳の中に構成された知識、学習成果の房(葡萄のように)、または脳内の家具の引き出しであり、教養の分野も意味していると私は理解しています。major academic discipline : Gardner教授は科学、数学、歴史などの学科に関してはmajor academic disciplineという呼び方もしている。

 

(4)構成主義(Constructivism

  学習を理解するための理論において最も卓越しているのが構成主義である。現代の心理学者の多くがこの理論を人間がいかに学習するかを説明するのに用いている。構成主義が伝えているのは、「私たちが新しい理解や知識を、私たちのもつ古い理解や知識の延長に組み込んで、あるいは合わせることによって学ぶ」ということである。いわゆる「白紙状態に書き込む」ということはめったにない。もちろん、事前の知識や理解が初歩的であったり、誤っていたりすることはあるが、なんらかの事前の知識や理解に付け加えられた形で、またはそれが変化するという形でしか学習は起こらない。さらにそうした変化が起こった時、理解した事実の記憶を長時間にわたって保持することができる。したがって、講師は新しい知識を伝達する際、学習者の持っている文脈(Context)につなげることが大切である。

l          March 2006ファカルティ・ディベロップメントに関する主要文献紹介及び文献目録-広島大学高校教育研究開発センター編

(5)講演に登場したその他のHoward Gardner 著書

Gardner, H. (1991) The Unschooled Mind. BASIC BOOKS

Gardner, H. (1999) The Disciplined Mind. Penguin Putnam

 

(6)Howard Gardner関連Website

Harvard Project Zero : Howard Gardner is best known in educational circles for his theory of multiple intelligences, a critique of the notion that there exists but a single human intelligence that can be assessed by standard psychometric instruments. From 1972-2000, he was Co-Director of Project Zero. At present, he is chair of the Steering Committee of Project Zero and directs the GoodWork Project. He is also co-director of GoodWork's Interdisciplinary Study with Veronica Boix-Mansilla.

http://www.pz.harvard.edu/PIs/HG.htm

Howard Gardner.com

http://www.howardgardner.com/

(7)Japan Multiple Intelligences Society

http://www.japanmi.com/

 

Part II Short Lecture:

 

テーマ:”Current Thinking about Extreme Gifts”

Ellen Winner

 

 非常にきわだった可能性を持つ子供たちについて、短時間に概要をお話しする。

I. Extreme Children (ずば抜けた才能を持つ子供たち)

1)          Michael Kearney:6才で2つの大学に通った。

2)          David:3才で読書力を身につけた。

3)          Stephen6才でコンピューターマニュアルが愛読書だった。

4)          Peter2才で素晴らしい画を描いた。

中国やシンガポールでは、早期にこのような才能児に特別な教育の仕方を用意するが、スカンジナビアや日本では特別な扱いをしないようである。

II. Three Components of Giftedness (Giftednessの3要素)

  早熟、マスターすることへの熱望、自分らしさ

III. Giftedに関するいくつかの誤解 (#1〜#9)

#1:The Talented but Not Gifted Myth の誤解。

芸術に卓越した子はThe Talented、学問に卓越した子はThe Giftedとアメリカでは言われるがこれは誤解であり区別するべきではない。両方の分野に共通要素があるから。

#2:The Global Giftedness Myth あらゆる面で優れるという誤解。

ある分野に優れていると全ての分野に優れていると考えるのは誤解である。

Dettermanの研究によるとIQが高いほど各分野との相関性は低い。

#3:The IQ Myth IQに関する誤解

Savantsの例:

  子供たちの才能の持ち方は均質ではなく、IQが高くないと芸術や音楽的な才能がないというのは間違いである。サバン症候群の子供たちは自閉症であっても芸術家なみの絵を描く。Nadia(5才)はレオナルド・ダ・ヴィンチにひけをとらない画を描いた。

#4−5:Two Origins Myths 才能は内在的か、訓練かの誤解。

素人は、Giftednessは内在的なものと考え、

心理学者は、才能は集中的な訓練で開花すると考えている。

-Suzuki: 音楽教育で有名な[鈴木メソッド]を確立した人達は「あらゆる子供は適切に育つ限り、音楽的に豊かになる才能を持って生まれる。音楽的能力に生まれつきの才能(talent)はない。」と言っている。

-But: ずば抜けた能力が幼少時(13才)に現れるということは、通常訓練以前に生物学的基礎と関係があるようである。

-Brain Imaging:

-いかに才能児の脳が訓練の前後でどう違うか発見されていない。

-しかしnon-invasive(非侵入)脳映像化で将来発見出来るであろう。

#6:The Driving Parent Myth 親が一生懸命なら、子供が成長するという誤解。

子供のベッドサイドでうとうととしながら本を読む父親にむかって、Could you read the part Stephen envisions life outside Dublin again?まだ、まだ話を聞きたいる子供が催促する。

#7:The Glowing with Psychological Health Myth才能がある子は幸せという誤解。

-才能レベルが高いほど、内向性、非強調、社会的孤立。

-幸せ度が低く、人と一緒にしたいが、通常の子ほど寂しがりではない。

-20-25%の才能児が社会的、感情的問題を抱えている。

#8:The All Children Are Gifted Myth 全ての子に才能があるという誤解。

<両親>「6才の子が16才の子のように本を読んでいるが、どう対応したら良いか」

<校長>「子供をプッシュしないこと。学校は特別に個々の対応はしていない。子供達は皆同様な才能を持っている。」

#9: The Gifted to Genius Myth 天才児が、天才に開花するという誤解。

神童をどういう教育の中に置いたらよいのか今の社会では明解になっていない。

-多くが落ちこぼれる。

-多くがエキスパートになる。

-才能児がH.ガードナー教授のいう“全く新しい分野を切り拓く”C(大文字の)クリエーター<天才>になることは稀である。

-遅咲きがCクリエーターになることも稀にある。

 

IX. Concluding Remarks

最後に纏めると、ずば抜けた才能をもった天才児は不思議な存在であり、私達もまだ全てを理解していない。天才児をどういう教育の仕組みの中でどうしたらよいのかも、今の社会では答えられていない。家族とっても素晴らしい授かり者であると同時に、ストレスの対象でもあり、社会においても苦慮している存在である。

 

注)Ellen Winner 教授は台湾にて、基調講演をされた帰路に残念ながら短時間ではありましたが、Short Lectureを御願い致しました。Howard Gardner教授の奥方で、Harvard大学教育学大学院Project Zeroの主任研究員でもあります。(上條)

 

V. Reference

 Ellen Winner's research interests include: Psychology of art; nonliteral language understanding in children and adults; theory of mind abilities in normal children and in pathological populations; development of academically and artistically gifted children.

http://www.pz.harvard.edu/PIs/EW.htm          

以上

061107MK